野球のピッチャーをやっています。肘の外側が痛く軟骨が出ているので投げてはいけないと言われました。くわしく教えて下さい。(小6男子)

肘のスポーツ障害(上腕骨小頭離断性骨軟骨炎)

投球による肘のスポーツ障害を野球肘と総称していますが、医学的には15以上の病名があります。この方の場合おそらく上腕骨小頭離断性骨軟骨炎と思われますので、今日はこれについてお話しましょう。

レントゲン写真 上腕骨小頭離断性骨軟骨炎は「軟骨が出た」とか「軟骨を取った」という野球による肘の障害でよくみられます。投げ過ぎが原因です。野球以外でもテニスや器械体操などでも発生します。上腕骨の肘外側の部分が骨ごと剥がれる状態です。症状は肘の外側の痛み(投球動作でも)、肘が伸びなくなる、腫れなどがあります。レントゲンは普通に撮る方法では診断できないことが多く、特別な撮り方をしないと見落とす可能性が高いです。特別な撮り方をすると病変部がよくわかり、透亮期・分離期・遊離期の3つに分けられます。
 治療はリハビリで低周波をかけたり関節を動かす理学療法を行いますが、投球禁止が一番大事です。透亮期・分離期での投球禁止期間は半年から1年です。その間のバッティング、投げない守備、走塁などの練習は制限なく行っても構いません。しかし遊離期の場合1年の投球禁止でも治らない場合が多いです。分離期・遊離期では手術が必要になります。剥がれた骨を取り出し上腕骨に小さな穴を開けるドリリングという方法です。骨をつける方法もありますがつかない場合再手術が必要になるので、私個人としてはこの方法はあまり積極的には行っていません。
 もしそういった治療が嫌な方は、利き手を変える(右投げを左投げにする)とか野球をあきらめて他の種目にするしかないと思います。小学校6年生であればスイッチは可能でしょう。また投球フォームも肘に負担の少ないオーバースロー(真下投げ)に変える必要があるでしょう。真下投げは「めんこ」の投げ方に似ています。昔はそういった遊びの中から投げることを覚えていましたが、今の子供はめんこ等の身体を動かす遊びはほとんどやったことがなく、見よう見まねでスポーツを始め、無理な投げ方をしているのが現実です。
 子供は子供に合った遊びながらのスポーツを楽しむことが大事で、低年齢のうちから競争心をあおりスポーツをさせることは避けるべきです。